局所療法に偏重する日本褥瘡学会を批判する。(Ⅳ)

日付: 2018年3月1日

 亜鉛補充の全身療法では、殆どポケット形成を考慮する必要がない。

〇○〇○ 78歳 女性                           

認知症等々にて、他の医療機関及び同施設の訪問看護での在宅医療中の患者。      

2015.09.24 初診。認知症、脳梗塞等々で、他院での在宅療養中の患者

      10日前ごろより悪化した仙骨部褥瘡について、褥瘡治療を依頼され受診。

      仙骨部に大きく開口した潰瘍から尾骨周辺まで達するポケットと肛門の

      周辺にまで至る広範囲の発赤を示す感染と悪臭のある浸出液多量。

      午後の初診なので、ゲーベンクリーム等の局所処置のみとする。

   09.28  かなり深い褥瘡で、悪臭酷く、浸出液も多量で、同部の痛みも強い。

                    食事はまあまあ摂取しているという。

      午前の採血で、Alb:2.8 Zn:72 Al-P:273

              プロマック(75)2T 昼食後1回投与で亜鉛補充療法を開始する

   10.01      深部の不良肉芽をデブリ

   10.05     まだ欠損とポケットは大きいが、褥瘡の周辺組織はしっかり締まってきた。

      潰瘍底部にやや良好な肉芽が出てきた。浸出液は減少。

 

  10.08    深い底部のデブリスの悪臭まだ強い。軟膏はイソジンシュガーで良い。

  10.15     デブリスの悪臭減。

  10.19     順調に軽快。瘡縁締まり、浸出液と臭気減。

                       Alb:2.8 Zn:67 Al-P:284

   10.24   ポケットは縮小しつつあるが、肛門側に向かって5cm程の瘻孔

      自宅で、軟膏3回ほど交換、訪看2回/週。

   10.29   ポケットは側方に狭く、肛門側にのみ残る。

   11.02   瘻孔はあるが狭くなった。瘡縁、瘡口は狭くなる。

   11.19    瘡口はどんどん狭く、褥瘡腔は狭い。5cm程の細い瘻孔が残る。

                         Alb:2.6 Zn:65 Al–P:282

 

【訪看では狭くなる褥瘡口が閉鎖し、瘻孔が残らぬ様に綿棒、注射器で

 ユーパスタを 押し込んでいるという】

 <=>【ポケット(死腔)についてはあまり気にしないで良い。】

 

    2015.12.07 本患者は仙骨背面から尾骨方向への広範囲に及ぶ膿瘍を伴った褥瘡であったが、亜鉛補充療法で、褥瘡は本来の健常な創傷治癒の傾向が復活し、褥瘡の局所療法のみでは問題となるポケット(死腔)はどんどん縮小し、細い瘻孔が残った。

 浸出液もなく感染傾向もないので、これまでの日本褥瘡学会の教育の通り、死腔や瘻孔が残存しない様にと苦労していた訪問看護師に、【開口部が閉鎖するまで洗浄のみで、出来るだけ壊死物質など少なく残すようにするだけで良いこと、瘻孔が残って、開口部が閉鎖したらそれでもよい。浸出液が貯留して、万々一化膿したらその時に切開しよう。キッと必要ないと思うが、、と伝えた。】 12.14     瘻孔は閉鎖しそう。瘻孔はテフロン針による洗浄のみで良い。訪看に指示。

 

    12.14     瘻孔は閉鎖しそう。瘻孔はテフロン針による洗浄のみで良い。訪看に指示。

2016.01.28    ゾンデで7cmほど入る細く長い瘻孔があるが、感染の兆候なしとのこと。

【亜鉛補充療法では褥瘡は自然に治癒の傾向があるので、ポケット形成は心配は不要】

 

 03.14   褥瘡は全く治癒している。感染なし。

 その後2017.12 の現在まで再発なしという。

 

<コメント>:本症例では亜鉛補充療法による血清亜鉛値等の変動が燻っている。当時は確信がなかったが、

現在では、【亜鉛とキレートする薬剤など多剤服用症例である可能性が高い】と考えている。