ご挨拶

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ようこそ 亜鉛欠乏症のホームページにいらっしゃいました。

 

2002年秋。私共は『多くの医師が考えているよりも、遙かに多くの亜鉛欠乏症患者さんがいる』ことに気付きました。

1961年に、プラサドがヒトの亜鉛欠乏症の存在を示唆する論文を出して、今年で、丁度45年が過ぎ、この間に、文献的、教科書的には実に多彩な亜鉛欠乏症状が知られています。日本では、日大耳鼻咽喉科名誉教授の冨田寛先生のお仕事で、亜鉛欠乏症は味覚障害として知られていますが、それ以外には『亜鉛欠乏症にはこれほど多彩な欠乏症状がある』と実感として知っている医師は殆どいないと言っても過言ではないでしょう。
特に、この飽食時代に亜鉛欠乏症など『余程の特殊な状態でなければ、無い。』と言うのが、一般的な常識でしたし、現在でもそうです。

 

しかし、我々はこの四年余で、実に多くの多彩な症例を経験しました。それは、味覚障害は勿論のこと、食欲不振減退から拒食褥瘡の発症治癒遅延舌痛はじめ口腔咽頭症状貧血下痢、そして、元気度にも及ぶ多彩なもので、最近では、特に、多くの原因不明とされている皮膚疾患(例えば、掌蹠膿疱症膿疱性乾癬尋常性乾癬等々、等々)や“かゆみ”等の皮膚症状にも亜鉛の欠乏が関係することが、次第に判ってきました。
私共の診療所で、この四年間に、亜鉛欠乏症を疑った患者さんは350名を超え、亜鉛欠乏症と考える患者さんは250名を超えました。人口5,500名の旧北御牧村を主たる診療圏とする私共の小さな診療所では、とても大きな数とも言え、又、患者さんの発見は氷山の一角とも言えましょう。

 

多くの欠乏症状の中で、原因の定かでない食欲不振は、まず、亜鉛欠乏を考えるべきですし、殆どの褥瘡の主要因は亜鉛欠乏です。補充療法で早期の褥瘡は数週。重症でも、約三ヶ月で治癒します。また、原因不明とされてきた難治の皮膚疾患“かゆみ”の様なありふれた皮膚症状亜鉛補充療法で劇的に治癒する等々を現実に経験し、微量元素亜鉛の大切さに、新たな目を向ける必要があると考え、このホームページを立ち上げることとしました。

 

勿論、亜鉛欠乏症の臨床はまだ判らないことだらけです。私共はそのほんの一部を覗いただけでキッと間違っていることも、多々あるでしょう。しかし、判ってきたことも多く、このホームページを見て是非、医師をはじめ、医療関係者に追試と批判、そして、追認をお願いしたいと思っています。
キッと、多くの悩み、苦しんでいる患者さんがいるはずで、多くの方々がその悩みから解放されることと考えています。

 

しかし、現在の日本では、医師も学者も国も製薬会社も、亜鉛欠乏症など余程のことがない限り殆ど存在しないものと考え、その証拠に、亜鉛欠乏症の正式な保険収載薬もないのが実情です。そこで、一般の人々にも、是非、亜鉛について大きな関心を持って頂きたいと思っています。

 

患者さんの発見の状況から、地域住民に亜鉛不足の傾向があると予測し、2003年、北御牧村村民の血清亜鉛濃度の調査をしました。村内の出来るだけ多くの階層を網羅する1431名につき、諸検診に便乗して調査し、また、2005年には、合併した東御市市民1773名の住民検診時の調査と 2005年から06年にかけ、長野県下、七国保診療所の受診患者854名血清亜鉛濃度調査を行いました。その結果は、詳細はホームページの内容に譲りますが、25年前のアメリカの一般市民を対象とした調査と比較しても、本調査の検査機関SRLのほぼ同時期に定められた基準値と比較しても、平均値は明らかに低値で、『長野県民は微量元素亜鉛不足の傾向にある』と言え、長野県が全国の中で、余程特殊な事情がない限りは、『日本国民は微量元素亜鉛不足の傾向にある』と言って良いと考えています。この25年間に何が起こったのかが問題です。

 

さて、原因は何か?大胆な仮説を述べさせて頂けば、私共は多くの食物に含まれる微量元素亜鉛が全体として少しずつ少なくなっているのでなかろうか?と考えています。
私共の仮説は間違っているかも知れません。しかし、食物は、海からの魚介海草類を除いて、米麦豆等の穀物や野菜、そして肉類、総て皆大地から採れるものです。その大地が痩せて、微量元素亜鉛の、イヤ、亜鉛のみならず、微量な多くのもの(科学的には良く判っていないが、生物にとって大切な多くのもの)の含有量が減少してきているのでないかと考えているのですが、如何なものでしょうか?この25年間で変化したことを真剣に考えるべき、と私共は思うのです。
医療関係者のみならず、医学、疫学や栄養学、農学や土壌学等々、等々、農林畜産業に関わる人々、官僚、政治家等々、イヤイヤ、国民皆が、人類が関心を持つべき問題かも知れません。

 

科学的に判っていることなんて、ほんのちょっぴりでしかないのに、、、、。『科学万能思考』は、実は『非科学的思考』であるのに、、、、。そのことを、ついうっかり忘れている、現代の同じ病根に繋がって、生じている現象なのかも知れません。
本当は、亜鉛だけでも一つの研究所が作られても、良いのでないか?とそんなことを考えつつ、このホームページを開設しました。
是非、立ち寄ってみてください。

 

『亜鉛欠乏症のページ』では、
○“亜鉛欠乏症について(冊子)”では2006年までにまとめた研究報告書(48p)のPDFファイルを開くことができます。現時点での亜鉛欠乏症に関する臨床と疫学についての可成りの情報を得ることができるであろうと考えています。
○“第二回(通算20回)日本臨床内科医学会ランチョンセミナー”では、2006年開催の学会で行われた、“亜鉛欠乏症について:ランチョンセミナー”の約一時間の講演内容を画像と音声で知ることができます。
『症例写真集のページ』では、
○私どもの診療所で経験した症例を次々に載せて行こうと考えています。
『掲示板』は、
○この様な研究は、独善に陥らず、極力間違った情報を流さないようにすべきと心しておりますが、そのためにもできる限りの提供できる情報は公開し、追試と追認、忌憚のない批判とアドバイスをいただきたいと考え、この掲示板を開設し、運営して行く積もりでいます。
○亜鉛不足、亜鉛欠乏症について、いろいろな立場、いろいろな観点から自由に Discussion できるそんな場になれば有り難いと思っています。

2006.

 

 

 

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2012年の現在、このHPを作成してから6年余が経ち、亜鉛欠乏症の臨床と疫学の研究に
分子生物学的研究が急速な進歩を示して、亜鉛生物学は大きく発展しています。
新たな発展を含めてホームページの更新をして行く予定です。
現在の亜鉛欠乏症の臨床と疫学及び基礎的な研究の裏付けを約1時間の講演に纏めた2012年亜鉛欠乏症の講演をPPT画像と音声でお伝えします。

 

2012.08.05

長野県 東御市立みまき温泉診療所
(旧)北御牧村温泉診療所

顧問 倉澤 隆平
医師 久堀 周治郎