皮膚科症例集

多彩な欠乏症例として、皮膚科症例を何例か掲載します。

皮膚科症例1

2006.01.04.初診。
○1995~96年頃から5月から7月にかけ、両手掌に発疹が始まる。
○1998~2000年頃からは毎年発症し、発疹は手掌から前腕に及び、12月頃から剥皮落屑も軽快し、殆ど普通の皮膚となる。
○2000年2月体調を崩し、それから、舌先端に痛み生じ、通年となる。

 

今回は
○2005年秋から、上下の口唇、口角炎。舌も割れて痛みあり。
○10月より、右手掌から水疱で発症し、掻痒強く、掻爬。浸出液がでて、発疹は両手掌、手背、前腕へと広がり、癒合して紅斑落屑を生ずる。背部、両大腿にも同様の皮疹が広がり、顔面にも発疹。
○4年程前から2~3の病院皮膚科に通院、軟膏療法など受けるが軽快せず。

 

hifu_1

 

皮疹が急速に軽快して行く経過

 

hifu_2

 

○皮疹は亜鉛補充両方によって、急速に軽快し、口唇、口角炎、舌痛等のいわゆる亜鉛欠乏症状や潜在していた食欲不振もすぐ治癒した。

○しかし、病苦?からのアロエや湯治、不明のクリーム使用のためか??両前腕、手背の皮疹のみは治癒遷延した。

○06.07.30.プロマック二ヶ月分の投与を受け、その後受診を中止した。

 

hifu_3

 

2007.02.23.【はがきによる報告】

○2006.08.  多忙で受診せず。

○2006.10.中旬 数泊の島への旅のあと、両前腕のかゆみが無くなり、その後、自然に治癒す。

○2007.02.23. 全く綺麗で以前の皮疹の面影全く無し。

 

治癒経過詳細

60104.Hb:12.3 Alb:4.2

Zn:74 Al-p:253

試みのプロマック投与開始。

60110.口角炎の亀裂治まる。これまでの薬そのまま。

60124.可成り良くなった。掻痒感10→05に減少。レスタミン以外中止。

Zn:82 Al-p:294

60221. 食欲でる。

Zm:76 Al-p:267

60328. 食欲もりもり。全体として大変良いが、両前腕アロエで悪化。

Zn:79 Al-p:251

60426. 人に勧められ、某温泉で湯治。両上肢、顔面悪化。その他はどんどん良くなる。

Zn:94 Al-p:301

60530. 非常に良い。掻痒に対しては、レスタミン軟膏、エバステルのみ可とする。

Zn:70 Al-p:288

60628. 両前腕のみ治癒が遅れている。何故か?

Zn:83 Al-p:304

60712. 他は殆ど良いのに、両前腕のみ変である。人に勧められて、某ハンドクリームを使用していた。

訳のわからないものは、中止!!舌、口角炎はすっかり良い。

60731. ハンドクリーム中止して、前腕、手背も可成り良くなる。食欲上昇し、美味しいという。

Zn:71 Al-p:250

◎プロマック八週間分もって、受診しなくなる。

 

臨床の現場では、患者さんは症状が改善するとしばしば来院しなくなる。症例の研究をしていての一番の問題点である。
この症例は病状の経過、舌痛、口角炎、潜在の食欲不振の改善、亜鉛補充療法による皮膚症状の急激なる改善から、亜鉛欠乏症による皮膚疾患と考えて良いと思う。
亜鉛の欠乏状態が徐々に改善されて、どのような状態になると皮膚症状が全快するのか?興味のあることである。

又、この症例はZn値もAl-p値もあまり大きな変動を示していない。事実として記載しておく。

 


 

 

皮膚科症例2

掌蹠膿疱症

○1995年より、高血圧、高脂血症等で通院の患者さん。
時々、掌蹠膿疱症が発症していた。
○今回は2005.12.27.発症したと受診。
○2006.01.26.症状急速に悪化してきたと、受診。
Tp:7.6 Alb:4.5 Zn:64 Al-p:250.
○2006.01.31.皮疹の悪化ひどく、プロマックの投与開始。
食欲良好で味覚障害等はない。

 

hifu_4

 

○2006.02.07. プロマック投与1週間後。すごく軽快した。
ぴりぴりかゆかった。皮疹もどんどん良くなった。F
足蹠に新しい発疹は出なくなった。

Zn:78 Al-p:218

○2006.02.20.約三週後。2~3ヶの水疱はあるが、劇的な改善である。

 

治療経過詳細

2005.12.27. 掌蹠膿疱症、発症と受診。

2006.01.26. 掌蹠膿疱症.悪化Tp:7.6 Alb:4.5

Zn:64 Al-p:250

2006.01.31. プロマック投与開始。 食欲良。味覚障害無し。

皮疹は今回は05.12.24.頃から発症どんどん悪化した。

2006.02.07. すごく軽快した。ぴりぴりかゆかった皮疹もどんどん良くなった。

足蹠に新しい発疹は出なくなった。

Zn:78 Al-p:218

2006.02.20. 手掌は良くなった。2~3ヶ水疱が出たが。

2006.03.22. 03.15.から少し、手掌に皮疹がでた。

2006.04.07. 皮疹は乾いた。

Zn:86 Al-p:333

2006.08.01. 殆ど良くなる

Zn:70 Al-p:329

2006.08.23. 可成り良い。手背に多少皮疹

2006.10.18. 手掌の中心に少し。

Zn:67 Al-p:359

2007.02.14. 殆ど良い。

Zn:81 Al-p:279

2007.04.     最近は発疹発症なし、と言う。

 

コメント
我々の診療所は一般の診療所であるから、特殊な病名がつくような皮膚科症例はそれほど多くはない。研究報告書で報告した掌蹠膿疱症以来、本症乃至は類似の疾患にどうも亜鉛が関与しているらしいことに気づき、亜鉛補充療法をすると、殆どが軽快乃至発症しなくなる。尤も、我々はそれほど多くの本症の経験がないから、この症例の経過も自然経過であると言われれば、それまでであるが、亜鉛補充療法を試みる以前の成書にある治療法でこれほど劇的な経過を経験していないので、是非是非、皮膚科の専門医は関心を持っていただきたいと思う。
我々は今後も追跡をして行く予定である。

 


 

皮膚科症例3

掌蹠膿疱症類似症例(肥厚 角化 炎症)

○2006.09.25初診。

○2006.07.頃より、両手掌の中心部より掻痒生じ、次第に広がった。

紅斑と角化、剥皮落屑を生じた。掻痒がひどい。

食欲普通。偏食なし。農家。米野菜自給自足

Tp:7.6 Alb:3.9 Al-p:312 Zn:56     真菌検査(-)

○7月より、皮膚科でタベジール(1)1T ハイチオール(80)1T リンデロンDP

ヒルロイドソフトで、 治療しているが良くならない。プロマック投与開始。

 

hifu_5

 

○2006.10.03. 可成り良くなった。掻痒が軽くなった。食欲の変化余りない。リンデロンDPをリンデロンVに変更。 

○2006.10.16. 掻痒が少なくなった。Zn:104 Al-p:258 

○2006.10.30. 可成り良くなる。手掌の周辺部がもう少し。

○2006.11.14. 手は綺麗になった。掻痒はない。Zn:108 Al-p:279

○2006.11.27. 中指の基部に角化まだあり。手掌の小指、手関節よりに一部掻痒。

○2006.12.19. 良くなった。痒みちょっとあることもあるが、すぐ良くなる。リンデロンV中止。Zn:74 Al-p:285

○2006.02.26. 02.10.に薬切れたが、全く痒みもなく、治った。と本人。

手掌の皮膚も殆ど普通。それ以後プロマックの服用なし。

○自覚的に問題なく、皮膚科的には問題ないので、治療終了とする。Zn:61 Al-p:274

 

 

皮膚科症例4

爪甲の異常

 

hifu_6

 

○2006.03.20. 爪変形。2005.熱傷で形成外科的治療を受けた。

そのころより右母指爪変形生じ、次第に左中指、左母指、右示指に進行した。 スプーン状変形。他に両下肢に皮下出血あり。

○2006.03.22. Hb:12.7 MCV:86.8 Fe:170 フェリチン:47.9 Zn:89 Al-p:174

○2006.03.29. アフタ性口内炎2-3ケ。先月より生じている。何年も前より、アフタ性口内炎が2-3回/月に生ずると言う。

味覚良く。食欲良。皮疹無し。

プロマック投与開始する。

 

治療経過詳細

2006.03.20. 【初診】爪変形。2005.熱傷で形成外科的治療を受けた。そのころより右母指爪変形生じ、

次第に左中指、左母指、右示指に進行した。

スプーン状変形である。他に両下肢に皮下出血あり。

2006.03.22. Hb:12.7 MCV:86.8 Fe:170 フェリチン:47.9 Zn:89 Al-p:174

2006.03.29. アフタ性口内炎2-3ケ。先月より生じている。

何年も前より、アフタ性口内炎が2-3回/月に生ずると言う。

味覚良く。食欲良。皮疹無し。

プロマック投与開始する。

2006.04.05. 口内炎いつもは1週間はかかるが、今回は2-3日で治癒した。

油ものでよく下痢があったが、最近はよい。

数年前甲状腺機能低下症と言われ、チラージン服用していたが、現在中止。

FT3:3.1 FT4:0.98 TSH:1.51

2006.04.19. 3月某病院皮膚科で、爪の変形は原因不明と言われる。口内炎生じない。

2006.05.16. 何年来続いていた、日に何回かの軟便下痢が生じなくなった。

口内炎も 殆ど生じない。食欲変化無し。

2006.06.13. その後、口内炎生じない。右足趾白癬症 爪:F

Hb:12.0 MCV:83.9 Fe:80 フェリチン:56.7 Zn:80 Al-p:232

2006.07.18. 07.04より喘息で入院。プロマック1週間中断、口内炎、

07.15. より口角炎発症した。下痢、3-4日

2006.08.25.  受診中断。プロマック終了となる。

2006.11.02. Hb:12.4 MCV:86.0 Zn:113 Al-p222

2006.11.28. 爪は9月頃にすっかり綺麗になったという。爪 F

口内炎は殆ど出来ないか、出来てもすぐ治癒という。口角炎は発症せず。

2007.03.頃   受診予定。

 

コメント
爪の変形は鉄欠乏性貧血で有名である。私はまだ経験したことはないが、腸性支端皮膚炎は皮膚のみならす、爪の異常も生ずると言う。

日常臨床でよくあるお年寄りの脆弱な皮膚、角化層が菲薄化し、容易にペロリと剥離する。擦過で水疱形成や浅い皮膚内の出血を生じ、掻痒を伴うこともしばしばあるいわゆる老化した皮膚である。こんな症例では、しばしば爪の変形や異常を伴う。

このような老化に伴うものとと考えられ、積極的な治療を受けなかったお年寄りの皮膚の大部分は亜鉛の補充療法で、驚くほどきれいになる。全く若人の皮膚とは言えないが、脆弱さが無くなり、可成り正常になる。

その時、爪の異常も治癒することをしばしば経験し、もしかして、この症例もと考え、鉄欠乏によるものを否定して、初診時血清亜鉛値:89と可成り高値であったが、補充療法をしてみた。

爪の改善は時間がかかり、亜鉛などの測定を特に初期にしていないので、典型的な変動をとらえていない。

しかし、永年発症していた、亜鉛欠乏症に特徴的な口内炎や口角炎の発症が抑えられ、下痢の発症も変化していること、また、2006.11.02の亜鉛値が113であることから、この症例も亜鉛欠乏によると考えたが、如何なものか?

 

今後次々と症例を載せていく予定です。