亜鉛トランスポーターZIP13の役割

日付: 2008年5月31日

 

亜鉛欠乏の症状は生体内での微量元素亜鉛の多彩な作用機序によるものであるが、その生物学的な役割はこれまで殆ど明らかにされてきていなかった。

 
最近、下記の理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター サイトカイン制御研究グループの深田俊幸等により、亜鉛トランスポーター ZIP13 のノックアウトマウスを使用して、骨.歯.皮膚等の結合組織発生に関わる亜鉛の関与の一端を分子生物学的に示した論文が発表された。

 
これは、褥瘡の発症、治癒の臨床的経過の一部を見事に説明する発見であり、臨床と基礎をつなぐ大変大きなニュースである。

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http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0003642

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結合組織における亜鉛トランスポーターSLC39A13/ZIP13の役割;SLC39A13/ZIP13はBMP/TGF-bシグナル経路の新しい制御分子である。

 

亜鉛は骨・歯・皮膚等の結合組織に比較的豊富に存在する必須微量元素であるが、その生物学的役割は明らかにされていない。

我々は、亜鉛の意義を検討する目的で、今まで機能が解明されていなかった亜鉛トランスポーターの一つであるSlc39a13/Zip13のノックアウトマウス(Slc39a13-KOマウス)を作製した。

 

Slc39a13-KOマウスは成長遅延をはじめ、骨・歯・眼・皮膚等の硬組織および結合組織において劣性遺伝的な進行性の異常を発症した。Slc39a13/Zip13タンパク質は、骨芽細胞、軟骨細胞、歯髄由来細胞および繊維芽細胞等のゴルジ体に局在し、Slc39a13-KOマウス由来の細胞では細胞内亜鉛分布状態が変化していた。

 

さらに、Slc39a13/Zip13はBMP/TGF-bのシグナル伝達経路において、 Smadタンパク質の核移行を制御していることを発見した。

 

一方で我々は、Slc39a13-KOマウスと類似した症状を示す新規エーラスダンロス症候群の患者を見出し、遺伝子検査によってSLC39A13/ZIP13のloss of function変異を発見した。

 

即ち我々は、亜鉛トランスポーターSlc39a13/Zip13がマウスとヒトの結合組織の発生に重要であること、その変異はエーラスダンロス症候群の原因になること、さらにBMP/TGF-bのシグナル伝達に関与していることを明らかにした。

 

以上の成果は、Slc39a13-KOマウスの結合組織の発生と疾患の解明の為の新たなモデル動物としての価値と、亜鉛とその恒常性がどのように結合組織の発生に関わるのかその仕組みの一端を示すものである。

 

 

以上