論理的亜鉛補充療法の実践(Ⅲ) ~血清亜鉛値などの測定をする~

日付: 2017年3月21日

【血清亜鉛値の絶対値で、亜鉛欠乏症の診断は出来ない】

 

 

では?どうするのか!?

 

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(Ⅱ)血清亜鉛値などの測定をする

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多彩な亜鉛欠乏症の症状は、特異で典型的な症状もあるが、他の原因でも発症する一般的症状も多く、疑った症状を亜鉛欠乏症と診断するために、続いて血清亜鉛値を測定する。

 

欠乏症であるから、亜鉛以外の欠乏症状の存在はより可能性が高まるので、一般的な血算、生化学の検査を含めて、血清亜鉛値の測定を行う。

 

また、亜鉛欠乏症であるから、当然、血清亜鉛値が、常識的には低値であることが予測されるが、全身状態を含めその他の検査データには、全く異常所見を認めないことも多い。

また、血清亜鉛値も、必ずしも予測の低値域に存在するとは限らない

 

 

血清亜鉛の絶対値で、亜鉛欠乏症の診断はできない】が、

診断及び治療の論理的亜鉛補充療法には【初診時血清亜鉛値の測定】が必要である。

 

さらに【群の基準値は個の正常値ではない】こと、血清亜鉛値の評価に大切と、先に記して置く。

 

 

 

 

血清亜鉛値とは

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2002年、多数で多彩の亜鉛欠乏症の存在に気が付いて以来、1,000名を超える疑い症例をエクセルで登録し、住民の疫学調査を含め、キッと10,000件を遥かに超えるであろう血清亜鉛濃度の測定をしつつ、論理的亜鉛補充療法で亜鉛欠乏症症例を1例1例追跡した。

 

血清亜鉛濃度については、まだまだ、判らないことだらけではあるが、判ってきたことも多い。

明らかになったことや推定・予測も含め、このシリーズで適所に記載することとし、
先ず、血清亜鉛について、その測定に必要なことを、簡明に先に箇条書きとする。

 

血清亜鉛値の意味することは、まだまだ、判らないことだらけである。

顕著な日内変動があり、午前から午後にかけて、平均で20μg/dlほど低下する。

ストレスでも、特に、手術などで、血清亜鉛濃度は一時的に低下する。

亜鉛は血清内からどこに移動し、どの様な生理的意味があるのか?不明である。

血清亜鉛値は加齢とともに、より低値域に分布する傾向を認めるが、

1)生理的か?

2)亜鉛欠乏症者や潜在欠乏者の増加か?

  が推測され、2)の可能性が高い。

亜鉛欠乏症患者、潜在亜鉛欠乏者の血清亜鉛値は低下する傾向が推測される。

男女間に大きな差は認められないようである。

血清亜鉛濃度の測定には採血後できるだけ早期の血清の分離が望ましい。

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血清亜鉛値の測定

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以上の様に、大変変動しやすい、判らないことの多い血清亜鉛値であるが、亜鉛欠乏症の診断と治療である論理的亜鉛補充療法には血清亜鉛値の初期値及びその後の推移の評価等などを総合的に判断することが大切である。

次回  ~ 欠乏症の可能性の推測 ~ を記す。

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血清亜鉛の測定法は(株)SRLの原子吸光法での測定が一般的であったが、現在では、(株)シノテストのアキュラスオートZnという亜鉛比色測定法で、生化学自動分析装置で容易に、且つ迅速に測定されるようになった。

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<参考>

 

 

亜鉛欠乏症症例の多発状況から、地域住民に亜鉛不足の傾向の存在を予測し、2003年、地域住民1,431名の血清亜鉛濃度の疫学調査をした結果である。

詳細は本HPの研究報告書や講演の該当の部を参照されたい。

 

青丸は午前の採血群白丸は午後の採血群である。

午後の群が午前の群に比して低値に分布しており、午前から午後にかけて、血清亜鉛濃度は日内変動があることを予測させる

 

 

 

 

比較的均質な集団であるヘルス・スクリーニング群について、時間による血清亜鉛濃度の変動を検討した図である。

午前8時から午後3時にかけ、直線的にほぼきれいに低下し、その差は約20μg/dlである。

血清亜鉛濃度の日内変動は、これまでにも、個々人の経時的な採血調査で確認されていたが、本調査で集団として明らかになった。

 

 

 

地域住民に亜鉛不足の傾向の存在を証明するために、より低濃度に分布する午後採血群を除去し、本知見・研究の大部分の血清亜鉛測定法であった(株)SRLの原子吸光法による測定法の制定当時の基準値65~110μg/dlを上下の赤線で示したものである。

 

小中学校の児童・生徒は比較的基準値内に分布しているが、成人では基準値の低値域に分布する傾向にあり、且つ加齢とともに、より低値域に分布する傾向を示す。

若人層にも存在するが、高齢者層には、より多くの亜鉛欠乏症者と潜在性欠乏者の存在が推測され、現実の亜鉛欠乏症患者の存在と一致する。