返信先: 【論理的亜鉛補充療法の実践欄(症例を中心に)】

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#10255
いわゆる舌痛症は亜鉛欠乏症 倉澤 隆平

  【明かな原因のない、いわゆる舌痛症は、大部分亜鉛欠乏症である】
  【難治性のいわゆる舌痛症の多くは常用薬剤、特に多剤服用症例である可能性が高い】
いわゆる舌痛症:肉眼的に特別の異常を認めないが、執拗に舌・口腔内の痛みを訴える疾患。
患者さんは、これまで歯科や医科の領域でその症状を患者・医療者間でなかなか共有されずに、奇妙な疾患として扱われる傾向があり、しばしば、精神的なもの、気の問題等などと言われて来た。現在も大部分が適当に扱われていると言って過言でない。しかし、このいわゆる舌痛症は、例外があることを否定はしないが、大部分が亜鉛欠乏症である。その亜鉛不足の原因は文明病ともいうべきものと筆者は考えている。この掲示板等などで徐々に明らかにして行こうと思う。薬剤の絡まない、原因の定かでないいわゆる舌痛症の多くは亜鉛欠乏症で、本症例のごとく、亜鉛補充療法に良く反応する。

 【K.Kさん】76歳 女性 
【基本症病名】アフタ性口内炎、舌痛症、口内違和感、味覚障害
【初診】2022.09.**
【既往歴】これまで特別の疾患なく、特別の治療歴なし。
2021/04頃、舌の先端に痛みあり。舌尖の縁に赤い粘膜疹、数個認めた。、1~2月して、赤い周辺に白い中心の粘膜疹が1か月ほど続き、余り治らないので、K病院口腔外科受診、口内炎(悪いものでない)でうがい薬と不味い軟膏処方される。1ケ月治療したがあまり変わらないので、受診中止。2021/10に、口内炎治らずとT病院受診、なんとも言われず、漢方薬とサリベート処方されるが、変化なく、2週で中止。その後、粘膜疹、自然に治まる。2022/01頃、また、舌痛と発赤あり。2022/07、同様の症状でT病院受診、同じ漢方薬処方され、2週間で中止。09月初旬にはまた発赤・舌痛あり、友人に紹介され、当院受診。
【主訴 現病歴】初診時口唇の内側の発赤と痛み。舌のザラザラ感、すべらっこくない。
味覚がおかしいこと、甘いものはいいが、ショッパイもの、酸いもの、辛いもの、熱いものは駄目。舌痛の性状はいわゆる舌痛症と同じ、睡眠時なく、食事摂取可。
【薬剤;医療関係】薬剤、サプリメント等なし。舌痛を発症する特別の原因なし。

【治療経過】
2022/09/** 初診時。本人は舌や下口唇内側の発赤というが、他覚的には特別の所見なし。
味覚障害や口腔内違和感は2021/04の口内炎発症の頃からと言う.ザラザラ感は舌の1/2前方にあると言う。
<治療計画>薬剤や偏食、疾患など特別のことなく、アフタ性口内炎、味覚障害など伴ういわゆる舌痛症であるので、初診時一般の血算、血液生化学に血清亜鉛値の検査をして、初診時(09/27)よりプロマックD75mg 2T 朝夕分にの標準的亜鉛補充療法を開始する。

10/12 【投薬開始後、2週間前後で、原則としては処方薬の副作用の有無、及び初期の症状の変化を知ることと、亜鉛欠乏症とはどんな疾患で、どんな治療を行うか、欠乏症の場合の症状の変化と血清亜鉛値の変化は一般にどの様な経過を取るか?等などの教育啓蒙を行い、初期の血清亜鉛値の検査とキチッとしたプロマックの服用の大切さを教える。】 薬の副作用なし。10/10頃より下k口唇内側の発赤と痛みなくなった。口内違和感かなり軽くなったが、しょっぱいもの熱いもので痛くなること変わらず。食欲出て来た。
初診時の血清亜鉛値:66、 Al-P:88 症状経過と血清亜鉛値で欠乏症の可能性高い。

10/26 亜鉛補充療法開始後約1か月の採血。舌の赤味はまだあると言う。初診時に、痛みのなかった舌尖の痛かったり、痛くなかったりの日が1/2=>1/3程になり、痛みの程度も1/3なった。食事の時以外に痛みを感じなくなった。ザラザラ感より軽く、食欲より食べられる様になった。Zn:86 Al-P:102 数年前から下腿の掻痒あり、=>ベビーローション
11/30 舌痛、発赤、ザラザラ感、酸いもの熱いもの問題な無なり、食欲も出て、下腿の掻痒もローションのためかなく、問題とすることなくなった。 Zn:96 Al-P:102
2023/01/25 舌痛をはじめザラザラ感や初診時訴えていた症状等全くなくなり、食欲は明かに増加したと言う。いわゆる舌痛症の治療としては、臨床的にはこれでいいのだが、この患者の本来の血清亜鉛値はどの程度なのか?原因見当たらずに発症した亜鉛欠乏症のその後の追跡のためもう暫く、追跡をすることに。