症例名:症例9 超高齢・低栄養の褥瘡症例

日付:2017年3月13日

 

 

 

2012.05.07

97歳 女性。

午後の初診。仙骨部の2ヶの比較的浅い潰瘍の褥瘡と右腰部の表面に発赤を示す疼痛ある深部のしこり(褥瘡)。

褥瘡で、午後の初診のため血清亜鉛値測定せずプロマック(75)2錠朝夕分2処方。

 
2012.05.28

仙骨部の浅い潰瘍は殆ど治癒。腰部の深部の褥瘡は表面中心に黒化と周辺に発赤を伴う。

亜鉛補充療法後、血清亜鉛値の上昇大きい時期ではあるが、Zn:96と比較的高値。

 

 

2012.06.16

腰部の褥瘡は表面の中心に黒化壊死と深部の壊死層の感染が進展して、
10~20cmの広範な発赤を伴う。同部の切開排膿と壊死物質のデブリを行う。

 

 

2012.06.18

デブリ2日後で浸出液はそれなりに多いが、切開創縁はかなりに締まって限局している。

 

 

 

2012.06.25

デブリ10日後であるが、褥瘡底部に壊死物質が少量残存、浸出液も少量。

06.20のZn:152

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2012.08.13

デブリ約2ヶ月であるが、褥瘡の収縮は進んでもう殆ど治癒。Zn:148

 

 

 

2012.08.27

細い小さな瘻孔のみ。

 

 

 

 

 

<コメント>

初診時:午後の受診。97歳の超高齢の元気のない女性患者。

 

右腰部深部の褥瘡(しこり)の痛みと仙骨部の真皮層までの褥瘡を主訴に来院。

他医で セロクラールセルベックスシグマートユベラNミオナールメチコバールアシノンカマアムロジンクラリチン等などの処方をされている。

Alb 2.9~2.6  Hb 10.6~9.8 と一般的な栄養状態も不良と言える。

 

午後の受診であり、褥瘡でほぼ間違いなく亜鉛欠乏によるものであるので、血清亜鉛値は測定せず。

標準的亜鉛補充療法(プロマック2錠;朝夕分服)を直ぐ開始した。

一週後の再診時、右腰部の疼痛は直ぐ軽快し、食欲も出て、少なくとも、褥瘡の急速な進展がないので、このままの処置で良いものと判断する。

二週後受診時。仙骨部の褥瘡は軽快しつつあるが、右腰部の褥瘡は中心部の壊死と感染が生じてきているので、補充療法開始一ヶ月の血清亜鉛値測定をし、念のためプロマック2錠:一回投与に変更した。

 

血清亜鉛値は後日に96 μg/dl と判明、特別投与法を変更する必要はなかったが、吸収障害が考えられる症例では、総投与量を変えず投与法の変更で済むことが多い。

中には3錠;一回投与になることもあるが、4錠(倍量投与)に成ることは殆どない。

壊死物質、異物や膿は切開排膿除去しなければ成らないのは、一般の外科の創傷治癒と同じで、本症例も同様である。

 

しかし亜鉛補充療法によって、褥瘡に特有の表皮・真皮・皮下組織の皮膚を構成する三組織の脆弱性・崩壊がなく、健常の皮膚の生成・維持が行われていることにより、褥瘡に特有の厳重な局所療法をしなくとも、また、HbやAlbなどの一般的な栄養状態の改善がなくとも、褥瘡は治って行くことを示している。

 

 

 

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