2002年、多彩で、多数の亜鉛欠乏症患者の存在に気が付いて、その知見の周知に努力して、20年目になろうとしています。亜鉛欠乏症の生物学については勿論のこと、その臨床についてもまだまだ判らないことだらけです。しかしまた、判ってきたことも数多く、その知見を駆使して、複雑に絡み合い、原因不明ともされ、時には奇妙にも思える個々の患者の多彩な症状・病態を、単純で、安価、且つ安全な亜鉛補充療法で軽快・治癒に導くことも可能になってきました。
しかし、亜鉛欠乏症の診断・診療の臨床の現場において、現在、ヒトの『血清亜鉛値』とは、ヒトの状態の何を表すのか?不明確のまま、ましてや『血清亜鉛値の基準値』はその定義さえも不明のまま、【数値のみが独り歩き】をしているように思えます。
飽くまでも生物であるヒトはアナログの存在であり、そのほとんどの疾患もアナログ的なものと言えます。特に、この亜鉛欠乏症は典型的なアナログ的疾患の一つであると私は考えます。現代のIT社会に蔓延るデジタル思考のマニュアル化した診断・診療法では、網の目が荒く、誤診や誤治療の基と危惧しています。この様な医療への基本的考え方を含め、症状や数値の変化の見方や考え方は勿論、ヒトの亜鉛欠乏症の個々の診療について、具体的な症例により、真剣に疑義・検討するような欄になればと思っています。
例えば、亜鉛とのキレート作用を持つ薬剤を常用する患者や、特に、多剤服用の亜鉛欠乏症例では、場合により低血清亜鉛値のことも、高血清亜鉛値のことさえもあるようです。
日頃の亜鉛欠乏症の診療で気になったり、疑問に思うこと投稿いただき、共に考え検討し、より間違いの少ない亜鉛欠乏症の診療に近づき、作り上げれればと思っています。